公開日:2026年10月13日|最終更新日:2026年10月16日|執筆・監修:株式会社ヒュージョン

2026年10月6日、三井不動産株式会社、株式会社熊谷組、株式会社ゲットワークスは、神戸市西区のベルトコンベア跡トンネルを活用した地中型データセンターの開発着手を発表しました。将来的に最大受電容量20MW規模を目指す計画で、初期開発では2027年末(熊谷組発表では2027年度)のサービス提供開始が予定されています。
本記事では、三井不動産・熊谷組・神戸市の公式発表をもとに、計画の概要、電力供給、土地・施設の貸付条件、地中空間ならではの利点と開発上の課題を整理します。なお、受電電圧や電力系統、非常用電源構成など、公表されていない事項は推測せず、今後確認すべき実務上の論点として解説します。
計画の概要
| 項目 | 公表内容 |
|---|---|
| 所在地 | 神戸市西区押部谷町木見~見津が丘 |
| 対象施設 | 総延長約14.5kmのベルトコンベア跡トンネルのうち約3km |
| 対象面積 | 約17,000㎡ |
| 計画規模 | 将来的に最大受電容量20MW規模 |
| 初期運用 | 2027年末/2027年度のサービス提供開始予定 |
| 設備方式 | シェルター型コンテナデータセンター、地下水を循環利用する水冷方式 |
| 貸付期間 | 10年から20年 |
| 年額賃料 | 7,572,000円 |
対象トンネルは1964年から神戸の住宅団地・産業団地整備や神戸空港の埋立てに用いる土砂運搬を支え、2005年9月に役割を終えた施設です。神戸市は2025年8月からサウンディング型市場調査を行い、その結果を踏まえて施設利用条件付き入札を実施しました。2026年9月4日に、代表企業を三井不動産、構成企業を熊谷組とする事業者が落札者に決定しています。
最大20MWの電力計画をどう見るべきか
公式発表にある20MWは、将来目標とする最大受電容量です。データセンターの受電容量には、IT機器だけでなく、冷却設備、照明、監視、ポンプなど施設全体の負荷が含まれます。そのため「20MWの受電容量」と「20MWのIT負荷」は同義ではありません。実際に搭載できるサーバー電力は、設計時のPUE、冗長構成、段階整備の内容によって変わります。
公表資料では、受電電圧、供給元変電所、専用線・複数回線の有無、非常用発電機や蓄電池の構成、系統接続の回答状況は示されていません。したがって事業化では、少なくとも次の点を電力会社との協議で確定する必要があります。
- 20MWまでの増強を見据えた段階別の契約電力と供給開始時期
- 特別高圧受電設備、引込ルート、変電設備を設ける地上部用地
- N+1や2Nなど目標可用性に応じた受変電・UPS・非常用電源構成
- 系統事故や保守時を想定した受電冗長性と復旧計画
- 再生可能エネルギー調達、非化石証書、将来の電力コスト管理
大規模データセンターでは、建物やサーバー設備よりも電力接続が全体工程を左右することがあります。本計画でも、初期開発と最大20MW到達時を分けた増設計画、受電設備の拡張余地、電力会社との協議工程が重要です。詳しくは当社のデータセンターの電力会社との協議・調整もご覧ください。
土地・トンネル施設の貸付条件
神戸市の発表によると、契約は土地売却ではなくトンネル施設賃貸借契約で、貸付期間は10年から20年、落札金額は年額7,572,000円です。対象にはトンネルと出入口の土地が含まれ、民間事業者が自ら管理・運営することが入札の条件とされています。また、安全管理上、賑わい・集客を目的とする施設には利用できません。
データセンターは、受変電、冷却、通信、防災、セキュリティなどに長期投資を要します。そのため賃貸借方式では、契約期間と設備投資の回収期間を整合させることが重要です。更新条件、原状回復、設備の所有区分、構造物の維持管理責任、災害時の復旧分担、第三者利用や担保設定の可否なども、事業性を左右する契約論点になります。公式発表に詳細がない条件については、契約書と関連協議の確認が必要です。
地中型データセンターの利点
年間15~20℃の冷涼性と水冷方式
事業者は、トンネル内の温度が年間を通じて15~20℃に保たれていることを確認しています。さらに地下水を循環利用する水冷方式を導入する計画です。GPUサーバーの高密度化により冷却負荷が増すなか、外気温の影響を受けにくい地中環境は、冷却エネルギー削減の可能性があります。ただし、実際の省エネルギー性能は、サーバー発熱密度、熱交換方式、ポンプ動力、排熱経路、水質管理などを含む実施設計と運用データで評価する必要があります。
耐震性と物理的セキュリティ
既存トンネルの大部分は地下約40m以深に位置し、事業者は地中空間の耐震性、外部からの接近が限定されることによる物理的安全性を強みとして挙げています。ゲットワークスのシェルター型コンテナデータセンターを組み合わせ、自然災害や外部リスクへの対応力を高める計画です。
既存インフラの再利用
既存空間を再利用することで、新たな大規模掘削を抑え、建設時の環境負荷低減と事業化期間の短縮が期待されています。遊休インフラをデジタル基盤へ転換するモデルとして、全国のトンネルや鉱山跡地への展開可能性も注目されます。
開発上の主要課題
1.既存構造物の健全性と止水・湿度管理
既存トンネルの転用では、覆工コンクリート、継手、湧水、漏水、地震時挙動を調査し、設備荷重や長期利用に対する健全性を確認する必要があります。電子機器に適した温湿度を維持するため、結露防止、排水、除湿、腐食対策を一体で設計することが重要です。
2.冷却水と環境管理
地下水の循環利用は有効な選択肢ですが、取水量、水温、水質、熱交換器の汚れ、バックアップ冷却、排水・熱放出の方法を検証する必要があります。関係法令や地域の水環境への影響を確認し、平常時と異常時の双方で安定運転できる計画が求められます。
3.火災・避難・保守動線
長大な地中空間では、火災検知、消火、排煙、区画、避難距離、消防活動、作業員の救助方法が重要です。コンテナの搬入・交換経路、保守車両の動線、故障機器の搬出、入口が使えない場合の代替アクセスも早期に検討すべき項目です。
4.通信経路の冗長化
物理的に安全な地中施設でも、通信ケーブルが単一路線に集中すれば可用性は高まりません。異なる局舎・キャリア・引込方向を用いた経路分離、ケーブルの防火・防水、地上部での切断リスク対策が必要です。公式発表では、IOWN APNを用いて他地域の拠点を結ぶ構想が示されていますが、神戸拠点の具体的なキャリア構成や冗長経路は今後の確認事項です。
5.許認可と関係機関協議
用途変更や設備設置にあたっては、建築、消防、電気、環境、地下水、道路・搬入など複数分野の確認が想定されます。既存施設の状態、地上設備の位置、危険物の有無によって必要手続きは変わるため、行政・消防・電力会社・通信事業者との事前協議を並行して進めることが重要です。詳しくはデータセンター開発における行政協議をご覧ください。
事業推進体制
- 三井不動産・熊谷組:地中空間を活用したデータセンター事業地の開発
- ゲットワークス:コンテナ型データセンターの運営
- パシフィックコンサルタンツ:事業化検討・設計支援
- 熊谷組(予定):整備工事
熊谷組は、対象トンネルの施工に携わった企業として、地中・土木構造物に関する知見を活用するとしています。不動産開発、土木、データセンター運営、設計支援を組み合わせた体制は、特殊な既存施設を再利用する本計画の特徴です。
ヒュージョンの視点:地中空間でも用地・電力・行政の一体評価が必要
本計画は、遊休インフラの再利用、地方分散、GPU対応、省エネルギー、レジリエンスを同時に検討する先行事例です。一方、地中型であっても、事業性を決めるのは空間の魅力だけではありません。電力の供給可能時期、地上部の受変電用地、通信経路、冷却水、消防・避難、維持管理責任、賃貸借期間を一体で評価する必要があります。
株式会社ヒュージョンでは、全国のデータセンター候補地について、用地調査・選定、電力会社との協議、行政協議、開発企画を横断して支援しています。既存インフラや特殊用地のデータセンター転用をご検討の際は、初期段階からご相談ください。
参考資料(公式発表)
- 三井不動産「日本初、既存トンネルを活用した地中型データセンターを開発」(2026年10月6日)
- 熊谷組「日本初、既存トンネルを活用した地中型データセンターを開発」(2026年10月6日)
- 神戸市「ベルトコンベア跡トンネル施設貸付の落札者決定」(2026年10月6日)
- 神戸市「ベルトコンベア跡トンネル施設貸付の実施」(2026年6月12日)
※本記事は2026年10月13日時点の公表情報に基づきます。計画内容は今後変更される可能性があります。
特殊な立地のデータセンター開発をご相談ください
既存施設や特殊な立地を活用する計画では、土地条件、電力・通信、関係法令を横断した確認が重要です。候補地の調査や開発方針の検討についてお問い合わせください。
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