公開日:2026年10月15日|最終更新日:2026年10月16日|執筆・監修:株式会社ヒュージョン

つくば市で計画される大規模データセンターと地域共生
イメージ画像(AI生成)。実際の施設・計画図を示すものではありません。

茨城県つくば市大穂地区で、最大受電容量1,000MW(1GW)を想定する大規模データセンター開発が進んでいます。開発面積は約45万5,000㎡で、一般に面積比較に使われる東京ドームの建築面積4万6,755㎡を基準にすると約9.7個分、すなわち「東京ドーム約10個分」です。

一方、2026年8月に開かれた住民説明会では、会場となったレストランでローストビーフやカニ料理などの食事と手土産が用意され、参加者から「接待のようだ」「かえって不信感が増した」との声が報じられました。事業者側は、夕食時間帯への配慮として、社会通念に照らして妥当と考える範囲の飲み物と軽食を用意したと説明しています。

問題の本質は料理の内容だけではありません。工事開始後の説明時期、招待制の参加範囲、将来1GWまで拡大する計画全体の情報、排熱・騒音・水利用・非常用発電機などについて、地域が検証できる説明が十分だったのかが問われています。本記事では、つくば市、つくば市議会、事業者の公式情報と報道を区別しながら、計画概要とデータセンター開発に必要な合意形成を整理します。

つくば市大穂のデータセンター計画とは

項目 公表内容
事業者 グッドマンジャパン/グッドマンジャパンつくば特定目的会社
計画地 茨城県つくば市大穂地区・高エネ研南側用地
開発面積 約455,000㎡(約45.5ha)
土地売却価格 11,029,248,000円
計画用途 データセンター、物流施設、防災拠点施設、アメニティ施設等
計画全体の最大受電容量 1,000MW(1GW)
第1棟 50MW。報道では地上約38m・4階建て
第1棟の工程 2026年に着工、2028年春頃の竣工予定

つくば市の公式資料によると、土地開発公社とグッドマンジャパンつくば特定目的会社は2022年8月30日に土地売買契約を締結しました。2023年2月に用途地域の変更、文教地区の削除、地区計画の設定が告示され、同年12月に開発行為が許可されています。

事業にはデータセンターだけでなく、防災備蓄倉庫、防災多目的広場、災害用水源、物流・アメニティ施設なども含まれます。防災拠点は、消防・警察・自衛隊等の活動拠点、災害廃棄物の仮置場、車中避難場所としての活用が想定されています。

「東京ドーム約10個分」はどの面積か

つくば市が示す開発事業面積は約455,000㎡です。東京ドーム公式サイトが、面積比較で一般に使われる基準として示す建築面積は46,755㎡です。455,000㎡を46,755㎡で割ると約9.7となるため、「東京ドーム約10個分」という説明は、開発区域全体の広さを表す比較として妥当です。

ただし、開発区域の全てが1棟のデータセンター建物になるわけではありません。区域内道路、防災拠点、広場、物流・アメニティ施設等を含む開発全体の面積である点を区別する必要があります。

最大1GWと第1棟50MWを混同しない

グッドマンの公表資料とつくば市議会の決議では、計画全体の最大受電容量は1,000MWとされています。一方、最初に建設される第1棟は50MWです。1GWは将来の全体計画に関する上限規模であり、現在または第1棟が常時1GWを消費するという意味ではありません。

受電容量には、サーバーなどのIT機器に加えて、冷却、ポンプ、照明、監視、その他の施設設備が使用する電力が含まれます。実際のIT負荷、平均消費電力、PUE、稼働率、増設時期は別の指標です。「原子力発電所1基分」といった比較も、出力規模を直感的に伝えるものであり、実消費量やCO2排出量が直ちに同じになることを意味しません。

大規模計画を評価する際は、50MWの第1期と将来1GWの完成形を分けると同時に、変電設備、送電ルート、増強時期、再生可能エネルギー調達、非常用電源、各段階の環境影響を一体で確認する必要があります。詳しくは当社のデータセンターの電力会社との協議・調整もご覧ください。

ローストビーフなどが提供された住民説明会

テレビ朝日と地域報道によると、事業者は2026年8月17日から19日の夜、周辺住民を対象とする説明会を市内のレストランなどで開催しました。説明会では、ウェルカムドリンク、サラダ、ローストビーフ、カニ料理、アイスクリームなどの食事と手土産が用意されたと参加者が証言しています。

一部の参加者は、説明会としては豪華すぎると受け止め、「接待のようだ」「食事や手土産で反対意見を抑えようとしているように感じた」と不信感を表明しました。一方、事業者は、夕食時間帯に重なることへの配慮として飲み物と軽食を用意したもので、積極的な情報公開と透明性の確保を基本方針として情報提供を続けると説明しています。

現時点で、食事の提供が違法または実際の利益供与であったと公的に認定された事実は確認できません。したがって、記事では住民側の受け止めと事業者側の説明を並べ、断定を避ける必要があります。

なぜ「配慮」が不信感につながったのか

工事開始後の説明だった

報道では、第1棟の本格的な建設が2026年2月に始まり、住民向け説明会は約半年後の8月に開催されたとされています。配置、高さ、冷却方式などを変更できる余地が限られた段階での説明は、住民から「意見を聞くためではなく、決まった内容を伝えるだけ」と受け取られやすくなります。

参加対象が限定されていた

説明会は招待状を受け取り予約した人が対象で、報道機関の入場も認められなかったと報じられています。近隣でも案内が届かなかったとの声があり、対象範囲の根拠や説明内容を地域全体で共有できないことが不信の一因となりました。

料理が本来の論点を覆ってしまった

住民説明会で大切なのは、誰が参加できるのか、どの資料を共有するのか、質問にどう回答するのか、回答できない項目をいつまでに示すのかという手続の透明性です。高額に見える飲食や手土産は、事業者に他意がなくても、説明内容より「接待ではないか」という印象を強めるリスクがあります。

住民が説明を求めている主な環境・生活上の論点

1.排熱と周辺の温熱環境

データセンターが消費する電力の多くは最終的に熱として施設外へ放出されます。排熱温度、排気方向、冷却方式、設備配置、猛暑時や全負荷時の熱拡散を、段階別の設備容量に応じて説明することが重要です。

2.24時間稼働の騒音・低周波音

冷却塔、ドライクーラー、ファン、ポンプ、変圧器等は24時間稼働する可能性があります。昼間の規制値だけでなく、背景騒音が低い夜間、低周波成分、複数棟の累積影響、非常用発電機の試運転を含む評価が必要です。

3.水利用と排水

水冷方式を採用する場合は、使用量、水源、渇水時の運用、排水方法、水質管理を示す必要があります。空冷方式や閉鎖循環式であっても、補給水や薬剤、雨水・工事排水など確認すべき項目があります。今回の計画について、記事作成時点で公表資料から冷却方式やデータセンター用水量の全体像は確認できません。

4.非常用発電機・燃料・排気

非常用発電機の台数、燃料種別・貯蔵量、試運転頻度、排気口の位置、大気への影響、消防・危険物関連の安全対策は、大規模化するほど重要になります。通常運転と停電時の双方を分けて説明すべきです。

5.景観・交通・緑地

報道では第1棟は地上約38mの4階建てとされています。大規模で窓の少ない建物が周辺景観に与える影響、工事車両の経路、既存樹木の保全、防音壁や緩衝緑地、夜間照明なども地域との協議対象になります。

環境アセスメントの対象外でも説明責任は残る

つくば市都市計画審議会の記録では、この開発は環境影響評価法に基づく環境アセスメントの対象ではないと説明されています。ただし、対象外であることは、環境への影響がないことを意味しません。関係法令・条例・地区計画等への適合に加え、事業者が自主的な調査、予測、情報公開、稼働後の監視をどこまで行うかが問われます。

特に、最初の50MWから将来1GWまで段階的に拡大する計画では、1棟ごとの影響だけでなく、複数棟・複数設備の累積影響を共通条件で評価することが重要です。

つくば市議会が公開説明会を求める決議

周辺住民は2026年4月に「データセンターから市民を守る会」を結成し、公開説明会を求める署名活動を進めました。2026年10月6日、つくば市議会は、グッドマンジャパンに対する説明会開催の要請と継続的な情報発信を求める決議を可決しました。

決議は、データセンターが将来の社会を支える産業基盤となり、税収増加による地域貢献が期待できると評価する一方、8月の説明会だけでは十分に説明が尽くされたとは言い難いとしています。そのうえで、周辺住民だけでなく、市民、市職員、市議会議員など、希望する幅広い人が参加できる説明会を改めて開催するよう事業者へ強く要請することを市に求めました。

地域共生ガイドラインから見た実務上の教訓

日本データセンター協会は2026年5月、「データセンター地域共生ガイドライン」を公表しました。ガイドラインは、法令遵守だけでなく、計画初期からの地域把握、環境・防災面の確認、丁寧で継続的な対話、運用開始後の情報提供を重視しています。

  1. 土地取得・基本設計前から対話を始める:変更可能な段階で配置、高さ、緑地、設備方式の選択肢を示します。
  2. 説明対象を明確にする:住宅との距離だけでなく、病院、福祉施設、学校、農地、事業所など影響を受け得る範囲を確認します。
  3. 通常時と最悪条件を数値で示す:夜間、猛暑、最大負荷、発電機試験、停電時を含めます。
  4. 各段階と完成時の累積影響を分ける:50MWの第1棟の説明だけで1GW計画全体を代表させません。
  5. 質問と回答を公開する:未回答事項、担当者、回答期限を記録し、参加できなかった住民にも共有します。
  6. 飲食より手続の公平性を優先する:公開性、中立的な会場、十分な質疑時間、資料公開を重視します。
  7. 稼働後の検証方法を合意する:騒音等の継続測定、苦情窓口、是正手順、結果公表を事前に決めます。

ヒュージョンの視点:1GW級開発では「説明工程」もインフラである

大規模データセンターでは、用地、電力、通信、造成、許認可だけでなく、地域との対話が工程と事業性を左右します。説明が遅れたり、計画全体と第1期の関係が不明確だったりすると、適法に進めている計画でも不信感、反対運動、行政・議会対応、工程遅延につながる可能性があります。

株式会社ヒュージョンでは、データセンター用地調査・選定、電力会社との協議、行政協議、開発企画・事業化支援を横断し、法令・インフラ条件と地域受容性を初期段階から確認します。大規模用地や段階開発における行政・住民との合意形成についてもご相談ください。

参考資料

※本記事は2026年10月15日時点の公開情報に基づきます。計画規模、建設工程、施設仕様、説明会の予定等は今後変更される可能性があります。

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