情報漏洩・サイバー攻撃の深刻化とデータセンターの将来性 ― AI時代の社会インフラを考える
公開日:2026年10月31日|執筆・監修:株式会社ヒュージョン
ランサムウェアや情報窃取を伴うサイバー攻撃は、IT部門だけの問題ではありません。受発注、物流、生産、顧客対応まで止まり得る事業継続上のリスクです。一方、生成AIとクラウドの利用拡大は、計算・保存・通信を担うデータセンターの需要を押し上げています。本記事では、企業の一次公表と警察庁・経済産業省の資料を基に、サイバーリスクとデータセンターの必要性を分けて整理します。
相次ぐサイバー攻撃が示す「止めない仕組み」の重要性
警察庁によると、2025年上半期のランサムウェア被害報告は116件で、半期として過去最多と並ぶ水準でした。攻撃はデータ暗号化だけでなく、情報窃取、業務停止、復旧費用、取引先対応へ波及します。
アサヒグループホールディングスは、2025年9月29日に発生したサイバー攻撃について、ランサムウェアにより複数のサーバーや一部端末のデータが暗号化されたと公表しました。アスクルも同年10月19日の不正アクセスによるランサムウェア感染で、サービスの一時停止と顧客・一部取引先情報の外部流出を公表しています。個別事案の原因や対策は各社公表をご確認ください。
データセンターは「サイバー攻撃を防ぐ箱」ではない
データセンターは、安定電源、非常用電源、冷却、通信、入退室管理、設備監視などを組み合わせ、情報システムを継続稼働させるための物理基盤です。適切な設計と複数拠点構成は、バックアップや災害復旧、事業継続計画を支えます。
ただし、データセンターを利用するだけでサイバー攻撃を防げるわけではありません。多要素認証、権限管理、脆弱性対応、ネットワーク分離、監視、オフラインを含むバックアップ、復旧訓練など、利用者側の情報セキュリティ対策と一体で設計する必要があります。
AI・クラウド時代にデータセンター需要が拡大する理由
生成AIは学習・推論に大きな計算資源を使い、クラウドサービスやデジタル化の進展は保存・通信需要を増やします。経済産業省と総務省は2025年6月の「ワット・ビット連携官民懇談会 取りまとめ1.0」で、AI利用や通信トラヒックの増加を背景に、電力と通信インフラを一体的に整備する重要性を示しました。
また、電力広域的運営推進機関(OCCTO)の2026年度需要想定は、データセンター新増設に伴う最大需要電力を2035年度に661万kWと個別計上しています。これは申込状況等に基づく想定であり、個別案件の開業、受電契約、系統接続を保証する数値ではありません。詳しくは「2027年以降の国内データセンター開発予測」をご参照ください。
将来性を左右するのは土地の広さより「実現可能性」
今後の候補地評価では、面積や価格だけでなく、次の条件を同じ工程表で確認することが重要です。
- 電力:初期・最終容量、受電時期、冗長性、増強工事、費用、脱炭素電力
- 通信:複数キャリア、物理的に分離した異経路、容量、遅延、開通時期
- 土地・防災:地盤、造成、洪水・内水・津波・液状化、排水、交通
- 法令・地域:用途規制、環境・消防、騒音・排熱、水利用、住民説明、地域便益
初期評価はデータセンター用地調査・選定、段階開発と事業性の整理は開発企画・事業化支援、受電条件の確認は電力会社との協議・調整、許認可と地域対応は行政との協議・調整をご覧ください。
レジリエンスと省エネを両立する開発へ
2026年4月に施行された省エネ・非化石転換法に基づく追加措置では、データセンター事業者に2030年度までにPUE1.4以下のベンチマーク目標が設定され、2029年度以降に新設するデータセンターには、所定の時点からPUE1.3以下の効率基準が求められます。冗長性を確保しながら、冷却方式、電源構成、部分負荷時の効率まで初期計画に組み込むことが必要です。
株式会社ヒュージョンの支援
株式会社ヒュージョンは、全国のデータセンター候補地について、用地、電力、通信、法令、防災、行政条件を横断的に調査し、事業化に向けた課題と協議事項を整理します。候補地の活用、段階開発、電力会社・行政との協議をご検討の企業・土地所有者の皆さまは、consult@fusion-dc.co.jpまでご相談ください。
当社が行うのはデータセンター開発候補地の調査・企画・事業化支援であり、不動産売買の媒介・代理ではありません。媒介等が必要な場合は、宅地建物取引業の免許を有する提携不動産会社が担当します。
参考資料
- 警察庁「令和7年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等」
- アサヒグループホールディングス「サイバー攻撃被害の再発防止策とガバナンス体制の強化について」(2026年2月18日)
- アスクル「アスクルのサイバーセキュリティ」
- 経済産業省・総務省「ワット・ビット連携官民懇談会 取りまとめ1.0」(2025年6月12日)
- 電力広域的運営推進機関「2026年度 全国及び供給区域ごとの需要想定」(2026年1月21日)
- 資源エネルギー庁「増加が見込まれるデータセンターの電力需要をどうする?」(2026年5月20日)
本記事は2026年10月31日時点の公表資料に基づきます。被害状況・制度・計画は更新される可能性があるため、個別案件では公表元と関係機関の最新情報をご確認ください。

